チェーン展開の奥義【商業施設編】
チェーン展開の奥義【商業施設編】

 

【初日】
 今までオーソドックスなチェーン展開の話をして、次は東京進出という話をしてきました。
 他地域展開にはあるリスクがあります。
 いわゆる土地勘がないのです。
 慣れた地元の広島であれば、あの街は雰囲気がいいとか、人通りがあるとか、繁盛店が良く出てくるエリアとか、いちいち調べなくてもわかります。
 ところが、東京を初め他地域はいわゆる土地勘がないのです。
 そこでいろいろ調査したり時間がかかります。
 そんなときは商業施設の出店をお勧めします。
 これにより出店スピードが加速化します。
 また、余程の街中よりも売上は多く見込めます。
 でも気をつけないといけないこともあります。
 そこで商業施設出店の経験から 思いつく注意点を上げさせていきたいと思います。

【二日目】
 まず商業施設に出店するときに一番気を付けないといけないのはこちらから追うものではないです。
 商業施設のカタログの出店条件はビックリするほど高いですよ。
 店舗面積に関わらずどんどん販売数が増える物販とは違って飲食は少々環境が良くて売上が増えても食材の原価はかかるし、料理を作る人とか、配膳をする人の人件費もかかるので、そう儲かりません。
 ですからカタログの家賃を払ってしまうと利益なんて出てきません。
 採算合いません。
 商業施設というものは「出店していただけませんか」と請われて上位の立場からハードな交渉の上、好条件を引き出して、出店するものです。
 間違っても「出店させてください」なんて言ってはいけません。
 足元を見られます。
 まあ、請われるという環境を自ら作り出すという高度の技もありますが、それは臨機応変に。
 請われて下さい。

【三日目】
 前回では商業施設に出店する際には、「請われて出店せよ!!」でしたね。 路面店で「請われる」ときは物件そのものが良くなくて少々条件を安くしてもらってもどうかな?ということが多いです。
 商業施設は違う。
 請われてナンボ。
 さて、「請われる」と言ってもいろいろパターンがあります。
@独創的な店舗で、それが出店されることによって、商業施設のイメージを著しくアップさせる。
 若い女性を商業施設に呼び込みたい等の飛び道具。
 売上自体はそれほど期待されていない。
➁安定して売上を伸ばす店舗。 家賃を売上歩合にしていれば商業施設の収益に直接つながる。
 どこの商業施設でも安定した売上を出しているので、収益予測には貢献する反面、「どこの商業施設に行っても・・・がある」という陳腐なイメージも。 という感じでしょうか。
 あっ、もう一つありました。
➂商業施設は一つのエリアを複数の店舗でスペースを埋めます。
 当然空きテナントは商業施設のイメージを著しく下げ、既存店舗にも迷惑をかけます。
 商業施設グランドオープン一か月前になっても空きスペースが埋まらない。
 店舗の内装工事は大体45日程度はかかるので普通は間に合わない。
 リーシング担当者はクビを覚悟します・・・。 そんなピンチに突貫工事をしてでもオープンできるナショナルチェーン。
➂の存在を知ったときはビックリしました。
 当然家賃も安いのでしょうね。
 ただし、それが可能なのは大手でしょうね。
 中小には準備期間がないのは自殺行為ですから。
 中小零細の自分たちは@を目指しましょう。
 そのときいい入店条件を引っ張り出せます(^^)

【四日目】
 「ぜひ、御社のあの・・・という店をわが商業施設に出店していただきたい!!」と請われて商業施設のリーシング担当者との交渉に移ります。
 じゃあ、さっそく家賃交渉と言いたいところですが、家賃はある程度カタログというものがあって大体の目安はわかります。
 出店検討のときに大きく考えなければいけないのは外食業のときは店舗開設費用です。
 外食の出店の際に、排煙・排水といった目に見えにくい設備の負担が非常に大きいです。
 商業施設の内装工事区分というものがあって、
 A
工事・・・ビルオーナーの負担でビルオーナーが施工する工事
 B
工事・・・テナントの要望によりビルオーナーが行う工事で、負担はテナント
 C
工事・・・テナントがビルオーナーの承認の基に行う工事
 このB工事とC工事をテナントが負担するわけです。
 路面の店舗は、工事業者はテナントで指定でき交渉しやすいですが、B工事はビルオーナーの指定業者で競争させられないし、業者自体がゼネコンなので工事単価も高い。
 一般的に商業施設のC工事の費用は、路面の店舗の内装費用程度です。
 ということは、商業施設出店の際B工事だけ路面店と比較して余分にかかってくるということです。
 また、商業施設は全体のスケジュールの中で動いているので工事は突貫工事になり、C工事も下手をすると工事費用が高騰します。
 あとお金の問題以外に肝心のC工事もビルオーナーの承認がないといけません。
 普段は問題なく承認されますが、たまにここがハードルになることがあります。

【五日目】
 さて、二日目に商業施設出店の家賃交渉の必要性を説きました。
 ここではその交渉術の一つを具体的に開示します。
 家賃は主に純粋たる家賃と共益費に分かれます。
 今までの経験上、共益費はまけてくれません。
 どんなに揺さぶってもまけてもらったことはございません。
 結構これが高く、路面での家賃に迫っていることがある。
 残るは家賃。
 商業施設へ出店したからといって、家賃+共益費で明らかに路面の家賃よりは高くなっているが、自店の売上が盛況になるかどうかはわかりません。
 売上不振の際のリスク軽減を頑張らないと!!
 ここで本来固定費である家賃の流動化を狙います。
 まずはカタログ家賃というものがあります。
 そこで聞きます。
 「これだけはほしい家賃はなんぼか?」
 強く出店要請を受けていることを背景に
 「うちはナンボくらい売れると思っていますか?」
 「じゃあ、売上歩合でいきましょう。歩率は最低家賃を想定売上で割ったもので」
 「うーん。その際は最低保証売上を設定させていただきます。つきましては、・・・万円はどうでしょうか?」
 「はー。先ほどおたくはうちが何万円売れると言われたじゃないですか。そういう最低売上は設定しても意味がないからやめましょう」
 「いえいえ。」
 「いやあ、私はですね。商業施設出店する際には、その商業施設とビジネスパートナーいや運命共同体だと思っています。出店要請していただいたことには感謝しているし、広島男子として想定売上通り御社の期待通りいきたいと思っています。」
 「しかしですね。ビジネスというものは万が一というものがありますよ。そうした万が一のことが起きたとき、弊社だけがその損失を丸々被るというものは経営者として容認できない。パートナーの御社にも協力をしていただきたいです。本当は最低保証売上を設定したって、そこまで落ち込まなければいいわけですから。そんな風にならないようにお互いに協力し合って頑張りましょう。」
 「握手」
 というクサいドラマでも演出して、最悪のケースを免れるように努力しましょう。
 まちがっても向こうのペースにはまり、想定売上を聞いて「そっかあ、うちもこんなに売れたらいいなあ」と頭をお花畑にして、カタログ家賃に判を押さないことです。

【六日目】
 大事なことを忘れていました。
 税理士として。
 外食とか、美容院とか、エステとか、ブティックもそうですが、 現金商売です。
 つまり売上は現金。
 でも仕入は掛け。
 人件費も日当ではなく月給。
 つまり資金繰り上、先に入金があります。
 だから運転資金は本来必要ではない。
 むしろ最初から現金は余る。
 でも商業施設って、一日の売上は商業施設で管理されます。
 そして月末までそういう状態が続き、家賃等経費と相殺後、後日入金される。
 後日とは何週間かも。
 つまりオープンして1か月は手許にお金がない状態が続きます。
 現金商売に慣れているとちょっとこれが不気味。
 昔、商業施設を中心にチェーン展開されている社長と話したのですが、自分たちの売上金を預けている間にその商業施設が倒産(><)
 二千万円ものの売上金が未入金です。
 その会社は経営基盤が盤石だからクリアできたのでしょうが、中小零細企業で1か月の売上がとぶと木端微塵でしょうねえ。
 これは注意してください。

【七日目】
 例えば居酒屋業態では実力のあるお店は、商業施設で成功するでしょうか?
 残念ながら、答はNOです。
 焼肉食べ放題の店とか、宴会中心の中華料理屋も難しいのではないでしょうか。
 駅ビルでもない限り、商業施設はお昼売るもの。
 夜業態では勝負できません。
 売ろうと思うのならランチタイムを中心に利益を確保できる業態にしないと。
 「あれ、自分たちは夜業態の居酒屋なのに担当者に声をかけられている。自分には見えなくても担当者には見えているのだろう」 と安心してはいけません。
 彼らは予想しているのではなく期待しているだけです。
 もしくは、ただ空きスペースを埋めたいだけかもしれません。

【八日目】
 商業施設での出店については厳しいことを言ってきました。
 でもいいこともありましたよ。
 昔いた会社で、ある某有名百貨店に出店のときの話。
 さすが有名百貨店。
 ラインアップも豊富。
 オープン後行列必致の有名フレンチレストラン。
 有名シェフのオーナーズレストランを商業施設用にアレンジした店。
 何かすごいのですが・・・。
 ひょっとして自分たちのお店は場違いか・・・?
 グランドオープンの前に各店舗の経営者で集まってキックオフミーティング。 オープン前に本部に呼ばれて大阪に飛びます。
 すると目の前に何か見たことがある人だ。
 「料理の鉄人」の名誉鉄人、石鍋裕だ。
 その隣に、イタリアンの巨匠、片岡護シェフ。
 カリスマの彼らを相手に会議をした。
 「本物の料理を作れ!!」
 「現場にちゃんと立て!!」
 強烈なオーラを放つ鉄人達に対して容赦ない論争を仕掛ける・・・。
 現実。
 小心者の私はそんなことはできません。
 緊張して何も発言できなかった・・・。
 ドキドキ。
 「棚田さん、何かご質問は?」
 「特にありません」
 シーン(-_-;)
 ただのミーハーな人でした。
 実際に見るとビビった(><)

【九日目】
 さて、商業施設の入店条件の話です。
 結局何が交渉できる条件なのでしょうか?
 まず、先日触れた家賃。
 売上歩合でしたら、その歩率は大いに交渉しましょう。
 そして、もし全面的に請われているのであれば、内装費用を商業施設に負担してもらえることもあります。
 これは大きい。
 商業施設出店の大きなハードルは内装費用だったわけですから。
 「請われてナンボ」と言っていたワケはここにあります。
商業施設に出店したいと思えば、 まずはたくさんの商業施設のリーシング担当者と知り合い仲良くなるべきでしょう。
 でももっともっと大事なのは 「ぜひ出店していただきたい!!」 と担当者が頭を下げてくるようなお店を開発すべきなのです。
 これがなくては話になりません(-_-;)
 十亀
 さて、出店検討しているその商業施設、本当にいいのですか?
 商業施設にも当たりはずれあるし、その本部の力量にもあたりはずれあります。
 かつて今一つの商業施設に格安の条件で出店させていただきました。
 商業施設本部からはその商業施設のいい雰囲気を作るためにもどうぞ出店してくれということであったが、そうは言ってもたくさんのテナントの集合体です。
 勝手なこともできないです。
 また、何か独自に宣伝活動等の企画をやろうとしても全体の雰囲気もあるので効果はほとんど出ません。
 それに独自の宣伝活動を規制している商業施設もあります。
 いくらいい条件出されたからと言って、
  雰囲気のよくない商業施設
  力不足の商業施設
 には出店してはいけません。
 後々貧乏くじを引くことになります。
 商業施設に出店検討の際、まず検討するのは他にどういう店舗が出店してくるか?
 いわゆるテナントミックスの問題をクリアしましょう。

 

 

お問合せ
棚田秀利税理士事務所
〒730-0013
広島市中区八丁堀12-3
KITAYAMAビル6階
FAX:082-962-8412