
相続人が一定の障害者であるときは、相続税を計算する上での優遇措置、「障害者控除」の適用を受けることができます。
夫が1月に亡くなりました。相続人は私と長女、長男の3人です。長男(25歳6ヶ月)は身体障害者手帳3級を保有しているのですが、財産を相続する場合の相続税の優遇などはあるのでしょうか?
一定の要件に該当する障害者については、相続税額から“障害者控除額”を控除することができます。この“障害者控除額”は障害者本人の相続税額から控除しますが、控除しきれない場合はその控除しきれない額を、その障害者の扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

相続等により財産を取得した者が85歳未満の障害者である場合には、計算されたその者の相続税額から、「障害者控除」として一定の控除額(下記3.の控除額)を控除することができます。
障害者控除を適用するには、次の要件すべてに該当する必要があります。
- @ 相続等により財産を取得していること
- A 相続発生時に日本国内に住所があること
- B 85歳未満であり、相続発生時に障害者であること
- C 法定相続人であること
次の障害者の区分に応じてそれぞれ次の算式で計算した金額を、“障害者控除額”として控除します。
一般障害者:10万円×85歳に達するまでの年数
対象となる者が、特別障害者又は一般障害者のいずれに該当するかは、主に次の区分に応じてそれぞれ判断します。
区分 | 特別障害者 | 一般障害者 |
@身体障害者手帳 | 1級又は2級 | 3〜6級 |
A精神障害者保健福祉手帳 | 1級 | 2級又は3級 |
B認定施設・指定医の判定 | 重度の知的障害者 | 重度の知的障害者以外の知的障害者 |
C精神又は身体に障害のある65歳以上の者 | @又はBに準ずる者として市町村等の認定を受けた者 | @又はBに準ずる者として市町村等の認定を受けた者 |
D常に就床を要し、複雑な介護を要する者 | @又はBに準ずる者として市町村等の認定を受けた者 | @又はBに準ずる者として市町村等の認定を受けた者 |
ご相談の場合には、ご長男は障害者手帳3級を保有されているとのことですので、一般障害者に該当します。
現在25歳6ヶ月ですので、満85歳になるまでの年数は【85歳−25歳6ヶ月=60年(※1)】となり、障害者控除額は、【10万円×60年=600万円】となります。
なお、障害者控除額が障害者本人の納付すべき相続税額を超え、控除しきれない場合には、その控除しきれない部分は、他の扶養義務者(※2)の相続税額から控除することができます。
- (※1)その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年として計算します。
- (※2)相続税法に規定する扶養義務者とは、配偶者、親・子などの直系血族、兄弟姉妹の他、3親等内の親族で生計を一にする者などをいいます。
<参考>
相法1の2、相法19の4、相令4の4、相基通1の2-1、相基通19の4-1、相基通19の4-2、民法877、国税庁HP「4167 障害者の税額控除」
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